難治例の治療(分子標的薬①)
本記事は潰瘍性大腸炎の難治例の治療についてです。
この記事でわかること
難治例へ使用できる薬剤の種類や選択
潰瘍性大腸炎は病変の範囲や重症度によっても異なりますが、一定の割合で5-ASAのみでは寛解しない例や、一度寛解しても再燃してしまう例があります。
そのような症例はまずはステロイドを導入することが多いです。
ステロイドに関しては以下の記事も参考にしてください。
ステロイドは大まかな使用期間がガイドラインでも定められているため、ステロイドが効いても、減量や中止したタイミングで再燃する症例(ステロイド依存性)や、そもそもステロイドの効果が乏しい症例(ステロイド抵抗性)はさらなる治療強化を行う必要があります。
ステロイド依存例は免疫抑制薬であるアザチオプリンを試し、ステロイドの離脱を試みますが、ステロイド抵抗例は生物学的製剤という別の薬剤を導入します。
近年、潰瘍性大腸炎に対する生物学的製剤が数多く登場し、剤型(薬の形状の種類、注射薬・内服薬など)も多様になってきているため、患者さんにとっては選択肢が増えて喜ばしい一方で、薬が増えすぎて違いを把握するのが難しくなってきているのも現状です。
以下では2022年6月現在における生物学的製剤の種類の解説をします。
生物学的製剤の中でも種類が複数に分かれており、まずは種類における分類をします。
薬の種類は
抗TNFα抗体薬、JAK阻害薬、抗IL-12/23p40抗体薬、抗α4β7インテグリン抗体薬およびα4インテグリン阻害薬
があります。
名前がわかりにくいのですが、それぞれ潰瘍性大腸炎に関与する免疫反応などの名前を示しています。
この中でさらに複数種類の薬剤があり、例えば抗TNFα抗体薬の中にはインフリキシマブ(レミケード)、アダリズマブ(ヒュミラ)、ゴリムマブ(シンボニー)などがあります。
なぜ同じ種類でも複数種類の薬剤があるかというと、
レミケードは点滴治療が必要な薬剤なので基本的に治療のたびに病院への通院が必要
ですが、
ヒュミラやシンボニーは自己注射が可能な薬剤のため、自宅で治療が可能
です。
一方で、毎回通院せずとも使用できるヒュミラやシンボニーは点滴が必要なレミケードに比べると効果が出るのに比較的時間がかかる傾向があり、
より重症な患者さんにはレミケードが優先される
こともあります。
このように同じ種類の生物学的製剤の中でも使い分けが存在するため、重症度や生活スタイルなどを踏まえて主治医と相談して薬剤を決めることが大切です。
※他の生物学的製剤については別の記事で行います。
JAK阻害薬:トファシチニブ(ゼルヤンツ)、フィルゴチニブ(ジセレカ)
抗IL-12/23p40抗体薬:ウステキヌマブ(ステラーラ)
抗α4β7インテグリン抗体薬:ベドリズマブ(エンタイビオ)
α4インテグリン阻害薬:カロテグラスト(カログラ)
参考:
各薬剤の添付文書