医師の僕が潰瘍性大腸炎になって調べたこと

潰瘍性大腸炎になってしまった医師のブログです。

難治例の治療(分子標的薬②)

本記事は潰瘍性大腸炎の難治例の治療についてです。                                             

この記事でわかること

難治例へ使用できる薬剤の種類や選択

 

生物学的製剤の②です。先に以下の①をご覧ください。

 

ucdoctor.hatenablog.com

 

前回は抗TNFα抗体薬について説明しましたが、今回は他の種類のものについて取り上げたいと思います。

 

JAK阻害薬

JAK阻害薬にはトファシチニブ(ゼルヤンツ)とフィルゴチニブ(ジセレカ)があります。

この2つのJAK阻害薬の大きな特徴はどちらも経口薬となります。

この2つの薬剤の違いは服用回数や副作用の頻度などです。

まずゼルヤンツは抗TNFα抗体薬が無効の患者さんに対しても効果を認めることがあります。一方で、免疫抑制効果も強く帯状疱疹が100人に7人程度の頻度で報告されています。

ジセレカは効果と副作用のバランスが良いと言われていますが、抗TNFα抗体薬が無効の患者さんに対してはゼルヤンツほどの効果は得られない可能性があります。その代わり、帯状疱疹のリスクもゼルヤンツに比べると頻度が低いと言われています。

ちなみにゼルヤンツが1日2回、ジセレカは1日1回の服用と、内服回数にも差があります。

抗IL-12/23p40抗体薬

抗IL-12/23p40抗体薬で使用できるのは、現在はウステキヌマブ(ステラーラ)のみとなっています。

ステラーラは初回のみ点滴が必要ですが、2回目以降は皮下注射が可能です。

ただし、ヒュミラやシンボニーと異なり、自己注射は認められておらず、通院が必要です(寛解時は12週間に1回)。

安全性が比較的高く、投与期間が長いため通院が必要なものの患者さん負担が軽減できるのが特徴で、抗TNFα抗体薬が無効の患者さんに対しても効果を認めることがあります。一方で効果が出るまで比較的時間がかかるため、重症の患者さんには使用できないことがあります。

抗α4β7インテグリン抗体薬およびα4インテグリン阻害薬

前者としてはベドリズマブ(エンタイビオ)、後者としてはカロテグラスト(カログラ)があります。

似たような種類に思えますが、この2つは異なる点が多いです。

まず、エンタイビオは点滴薬なので病院に通院し投与を受ける必要がある一方で、カログラは内服薬です。

エンタイビオは副作用が比較的少なく、高齢者や併存疾患のある患者さんにも使いやすいのが特徴です。ただ、JAK阻害薬や抗IL-12/23p40抗体薬とは異なり、抗TNFα抗体薬が無効の患者さんに対しては効果が不十分である可能性があります。

カログラはそもそも他の薬剤と異なり、寛解導入療法には使えるものの寛解維持の薬剤としては使用できません(長期使用ではある種の脳症を引き起こす可能性があり)。カログラはどちらかというと、ステロイドと同じような立ち位置で用いることができます(そのため他の生物学的製剤よりもやや軽症な患者さんにも用いることができます)。

 

ここに書いたのは各薬剤の特徴の一部ですが、各々一長一短があり患者さんの状態や生活によってベストな薬剤は異なるため、主治医とよく相談して選択してください。

 

参考:

炎症性腸疾患(IBDガイドライン2020

各薬剤の添付文書

各薬剤の臨床試験情報