潰瘍性大腸炎と抗生物質
本記事は潰瘍性大腸炎と抗生物質(抗菌薬)の関係についてです。
この記事でわかること
過去に使われた抗菌薬が潰瘍性大腸炎の発症に与える影響
潰瘍性大腸炎の発症には様々な要因が指摘されています。
具体的には遺伝的な影響や環境要因などです。
近年は腸内細菌についても言われており、抗生物質(抗菌薬)が腸内細菌のバランスを乱すことで、様々な病気のきっかけになる可能性が指摘されています。
今回はスウェーデンで行われた、約16000人の潰瘍性大腸炎の患者さんとそうではない健常な人を比べて、抗生剤がどのような影響を及ぼしたかを調査した論文を紹介します。
結果としては、過去に抗生物質を処方された人は、処方されたことがない人に比べて潰瘍性大腸炎になりやすいという結果でした。
潰瘍性大腸炎のなりやすさは、抗菌薬を処方された回数が増えるごとに増加し、
1回では1.1倍、2回では1.3倍、3回以上では1.5倍
と回数が多い方がより増えていました。
さらにクリニックなどで、「強い抗生物質」などと言われることが多い広域な抗菌薬(多くの種類の菌に効果が期待できるもの)はそうでないものと比べてさらに潰瘍性大腸炎の発症がより多いこともわかりました。
風邪に対して抗生物質を希望する方も時々いますが、その行動は潰瘍性大腸炎を将来発症する可能性を増やしてしまっている可能性があるため注意が必要です。
今回の研究は抗菌薬が潰瘍性大腸炎の原因とまでは言えないため、今後のさらなる研究が期待されます。
参考:
Nguyen, Lancet Gastroenterol Hepatol. 2021