潰瘍性大腸炎の長期予後について
本記事は潰瘍性大腸炎の長期予後に関する情報です。
この記事でわかること
近年の潰瘍性大腸炎の長期予後について
長期予後に関する報告はいくつかありますが、日本では比較的昔(20年近く前)のものが多そうです。
この20年の間に潰瘍性大腸炎の治療や治療薬の種類は格段に増えているので現在の予後についてわかっている情報を確認します。
最近のもの
北里大学が2013年に粘膜治癒と長期予後に関する報告をしています。本研究ではMayo scoreを用いています。
Mayo scoreにおける内視鏡所見を表すMayo endoscopic subscore(MES)の分類は下記の記事も参考にしてください。
この研究では
粘膜状態が良ければ良いほど長期での再燃率が低い
ことがわかります。
Mayo endoscopic subscore(MES)によって、臨床的な寛解後(血便がなくなり、便回数も通常に戻った状態)に初めて病院で内視鏡を行ってから
6ヶ月時点では非再燃率が
MES0:100%(つまり再燃した患者はなし)に対して、MES3:50%(つまり半年以内に半分が再燃しています)でした。
これを2年に伸ばすと非再燃率は、
MES0:78%に対して、MES3:0%と全ての患者さんが再燃を経験していることになります。
5年が経過してもMES0は78%と大きく変化していませんが、MES1→2→3と重症になるにつれて、40%→10%→0%と非再燃率は低下して行っていることがわかります。
このように臨床的な寛解後に初めて病院で行なった検査結果によって、今後数年のうちに再燃をしやすいかそうでないかはあらかじめ予測することができる傾向にあるようです。
そのため自分自身の粘膜の状態がどのようなものかを把握することは今後の生活に関わる重要な情報と言えそうです。
しかし、この研究が報告された後にも潰瘍性大腸炎の新規治療薬は何種類も登場し、重症とされていた患者さんの予後は改善している可能性があることには注意が必要です。
参考:Yokoyama, Gastroenterology Research and Practice. 2013